森一起の今夜もコップワイン #001 武蔵小山「牛太郎」 | Wine365

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12. November 2016

森一起の今夜もコップワイン #001 武蔵小山「牛太郎」

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青空を遮断した人口の楽園、武蔵小山パルム商店街。お定まりの都市開発で、駅を背にした左側は刃こぼれ状態。その周りにくねくねと続いていた、大小のスナック群、庶民たちの飽くことなき欲望のラビリンスも今はない。しかし、開発の手を逃れた西小山側の一角には、古くから愛されて来た酒場がポツポツと残っている。
ムサコの良心、「働く人の酒場」牛太郎はその頂点だ。

 

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申し訳ないほど、安くて美味しい愛すべきアテの数々。付け焼刃のエイジングなどでは、決して太刀打ちできない、昭和の歴史に裏打ちされた、巨大なコの字カウンター。店主、城さんの気品ある立ち居振る舞い、優雅な接客。惜しげも無く注がれる、アルコールの量の多さと安さ。毎日、開店と同時に常連たちでいっぱいになる店内。

城さんは、黙っていつものメニューを客の前に並べて行く。

 

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すぐ近くに本社がある博水社のハイサワーや、ハイッピー。根強い人気のホッピーと共に人気が高いのがグラスワインだ。赤・白共に、なんと1杯170円、銘柄はメルシャンの葡萄物語。1升瓶から注がれるワインのほか、昔ながらのブドー酒は150円。どちらも、名物のとんちゃん120円や1本100円のもつ焼きに合う。新東京三大煮込に選ばれた煮込だって120円という安さだ。ポテトとスパゲティを選べる、サラダも白ワインが進む。

店一番の高額メニューは、小鍋でサービスされる煮込豆腐300円。ほかはすべて、90円から120円という驚異のコストパフォーマンス。誰もが懐を気にせず飲める、あまりにも良心的過ぎる価格設定。ワインの杯を10回重ねたとしても、まだ2000円でお釣りが来る。こわもての常連さんたちも、みな凛として、礼儀正しく、優しい。誰もが牛太郎を愛し、明日もここで乾杯するために敬意を忘れない。現代の街が忘れかけている大切なものが、ここには全部ある。

 

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さて、そろそろもう1杯、赤か白をお代わりしよう!ガツ刺しともつ焼、とんちゃんもアンコールしようか。牛太郎の店内に、冬に向かう長い穏やかな陽射しが満ちている。1杯のワインと旨いアテ、お気に入りの酒場があれば、まだまだ、この街は捨てたもんじゃない。
乾杯、牛太郎。乾杯、城さん。かけがえのない今夜に乾杯しよう!
1杯のワインの向うには、少しだけ眩しい明日が見える。

 

「牛太郎」
住所:東京都品川区小山4-3-13
電話:03-3781-2532
営業時間:平日 14:30~20:00、土祭日 11:30~18:00(売切仕舞)
定休日:日曜日

森一起

街と泡好きなライター

下町ハイボールからシャンパーニュまで街と泡好きなライター、作詞家、ミュージシャン。9年続く、雑誌『料理通信』の人気連載「安くて旨くて何が悪い!」では、東京の目利き。食のキュレートサイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。
好きなワイン ジャン・イヴ・ペロンのヴァン・ド・フランス・ブラン・コティヨン・デ・ダム2013サン・スーフル
好きなつまみ タマリンドソースでグリルした鶏胸肉と青パパイヤをたっぷり挟んだ仏印風バインミーサンド

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