葉山考太郎のワインお悩み相談室♯8 ~ワインを悪用して、恋愛を成就させる手練手管の全て~ | Wine365

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24. June 2017

葉山考太郎のワインお悩み相談室♯8 ~ワインを悪用して、恋愛を成就させる手練手管の全て~

質問1

一日でワイン通に見える方法を教えてください。プロジェクトが成功した打ち上げで、明日、お洒落なワイン・バーへ行くことになりました。プロジェクトの全員(男性6人、女性5人)が参加するのですが、その中のサブ・リーダーの男性が物凄く気になっています。お店を選んだのは彼で、ワインが大好きだそうです。頑張って、彼の隣の席を確保するつもりですが、ワインのことを知らないので、彼から馬鹿にされないか心配です。少しだけワイン通に見える方法を教えてください(23歳、女性、物流関係)。

 

 

回答1

 質問者様の望みは、「1日でショパンの練習曲、『革命』を弾きたい」というのと同じです(ちなみに、ショパンの『革命』は、練習曲とは名ばかりの超難曲です)。でも、ワイン通に見せかけるだけなら超簡単。電話で腹話術を披露する程度の効果はあります。思いを寄せる男性のために、ワインに詳しくなりたいというのは、物凄く真っ当な理由ですね。彼だけでなく、ワインも好きになってもらえると嬉しく思います。私も、応援しています。

 まずは、ウチにあるワイン・グラスに3分の1ほど水を入れてグラスを回す練習をしましょう。グラスを右手の人指し指と中指で挟み、逆時計回りに回します。テーブル・クロスの上を滑らせるのがコツです。テレビを見ながらでも、電話で誰かと話しながらでも、無意識にグラスを回せると合格です(10分も回せばすぐにできます)。これで、明日、彼の隣に座った時、「液体はなんでも回す」というワイン通の癖が身に付いたことになります。明日は、ワインに限らず、コップの水も、「つい、うっかり」という感じでクルクル回してください。それを見た彼は、「あれ、ワインのこと知ってるんだね」と言うはずですので、「全然知りません」と強く否定してください。本当にその通りなのに、彼は「強い否定は肯定」と勘違いしてくれるはずです。

次はワインの飲み方です。まず、グラスを回さず、そのまま4、5秒香りを嗅ぐフリをしてください(本当に嗅いでもかまいません。この時の香りをアロマと呼び、ブドウの品種の特徴が出るのですが、そこまで深入りする必要はありません)。で、左上の天井を見て「ふーん」という表情をしましょう(「昨日のランチで何を食べたっけ?」と考えるといいでしょう)。次は、これまで練習してきたグラス回しです。5、6秒ほど回してから、香りを嗅ぐフリをします(この香りをブーケと呼び、発酵や熟成の特徴が出るのですが、そんなことは恋の成就と無関係ですので、無視してください)。で、今度は天上の右上を見て「へェー」という表情をしましょう(「昨日の晩御飯で何を食べたっけ?」と考えるといいでしょう)。その後で、一口飲みます。飲んだ後、絶対にワインの悪口を言ってはなりません。本当のワイン好きは、どんなにショボいワインでも、必ずイイ点を見つけて褒めます。みんながいる席で、「オレはワインを知ってるぜ」と印象づけたいために、ワインの悪口を言う人がいますが、これは恥ずかしい。人間の器は、何が嫌いかではなく、何が好きかで決まります。質問者様が彼を好きになったのも同じでしょ? なので、明日は、必ず、「美味しいね」って誉めてくださいね。

で、褒め方ですが、ワイン通っぽく見える「5つの試飲キー・ワード」をバシバシ使うことをおススメします。この5つは、初心者でも簡単に使えるのに嫌味がないのが素晴らしいところです。

最初のキー・ワードは「果実味」です。赤白泡のどんなワインを飲んでも、「果実味がありますね」と言えば、物凄くプロっぽく聞こえます。ワインは葡萄で作るので、「果実味がある」は当たり前。小学生に、「君は若いねぇ」と言う以上に当然です。逆に、一口も飲まなくても、「そこそこの果実味がありますね」と言えば、みんなが納得します(私も、大量にワインを試飲する場合、最後は疲れてくるので、飲まずに試飲コメントを書くことがあります。その時に便利な言葉が「果実味」です。なお、「飲まずにコメントする」は、私の企業秘密ですので、公言しないでください)。「フルーティー」も全く同じ意味ですが、安っぽく聞こえるで、彼の前では使ってはなりません。「かなりの果実味がある」「思った以上に果実味がある」など、いろんな言い方をするとイイでしょう。

キー・ワードその2は、「凝縮感」です。要は、水っぽくないことで、高級ワインの重要な要素です。少し濃厚なワインなら赤白のどちらでも、例えば、「1本980円のワインなのに、そこそこの凝縮感がありますね」と言えば、ハッタリ抜群です。

3番目のキー・ワードは「タンニン」で、赤ワインの渋みのことです。めちゃくちゃ渋い赤を飲んで、「うわぁ、渋ぅ~」ではなく、「タンニンがたっぷりですね(あるいは、バチバチですねぇ)」と言うとよいでしょう。ワイン・バーで出る赤ワインには、必ず渋みがありますので、無条件に「タンニンがいい感じですね」と言いましょう。

キー・ワードその4は、「ミネラル感」です。本当の意味は誰にも分からないのに、辛口の白を飲んだ時、試飲会の全員が必ず使う不思議な言葉です。甘味が全くないキリッとした白(ワイン・バーでは半甘口の白は、まず出てこないと思います)を飲んだ時、「ミネラル感がいい感じですね」と言うとそれらしく聞こえます。

最後のキー・ワードは「酸」です。これも、赤白の両方でよく使います。「キレいな酸がありますね」とコメントすれば、物凄くそれらしく聞こえます(酸味のないワインはないので、「果実味」と同様、あらゆるワインに無条件で使用できます)。

ミネラル、果実味、タンニン、凝縮感、酸の5つの頭文字を取ると、「ミカタギョウサン」になります。京都の古い言葉で「ぎょうさん」は「たくさん」の意味。「味方ぎょうさん」と覚えて、明日の打ち上げ飲み会でたっぷり使ってください。しっかりお気張りやす。

 

illustration:Tetsuro Sakaki

葉山考太郎

ワイン・ライター

シャンパーニュとブルゴーニュとタダ酒を愛するワイン・ライター。ワインの年間純飲酒量は400リットルを超える。これにより、2005年、シャンパーニュ騎士団のシュヴァリエを授章。「30分で一生使えるワイン術」(ポプラ新書)など著書多数。

好きなワイン

1番はタダ酒、2番目はブルゴーニュとシャンパーニュ。3番目は千円未満のワイン

好きなワインつまみ
たこ焼き、明石焼き、お好み焼き、蕎麦汁、ハムかつ、牡蠣フライ、海老フライ

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