葉山考太郎のワインお悩み相談室♯9 ~ワインを悪用して、恋愛を成就させる手練手管の全て~ | Wine365

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26. July 2017

葉山考太郎のワインお悩み相談室♯9 ~ワインを悪用して、恋愛を成就させる手練手管の全て~

 

質問1

赤ワインは、白ワインよりエラいのですか? 付き合い始めて3ヶ月の彼がいます。もともと、彼と私はワインが好きで、特に、喉越しのよい白ワインを飲んでいました。彼は、先月からワイン・スクールへ通いはじめ、最近、「赤ワインは白ワインよりエラいんだよ。白ばかり飲んでるのってダサい」と、濃厚な赤ばかり飲み、私を馬鹿にするようになって、モヤモヤしています。アドバイスをお願いします。(27歳、女性、公務員)

 

 

回答1

 彼は、耳でワインを飲んでいるように思います。男性によく見かける典型的な「発展途上のワイン初心者」で、ワイン・スクールの誰かに洗脳されたんでしょうね。

 まず、初心者が、なぜ、「赤ワインがエラく思えるか」の理由を挙げておきます。理由その1は、「白ワイン(酸味)+渋み=赤ワイン」であり、赤ワインが白ワインの全ての要素を含み、味や香りが複雑だから。理由その2は、赤ワインの方が長期熟成して、育てる楽しみがあるからです。

 この2つは、逆に、赤ワインの欠点にもなります。赤ワインに白ワインの要素が全て入っていて、かつ、味や香りが複雑ということは、調味料なら、白ワインが塩で、赤ワインが味噌になります。味噌が塩よりエラいと思いますか? 味噌ラーメンが塩ラーメンより美味しいと思いますか? 音楽なら、白ワインはショパンのスタイリッシュなピアノ独奏曲で、赤ワインは、60人でゴテゴテと鍋焼きうどんのように演奏するピアノ協奏曲みたいなものです。白ワインの方がスタイリッシュでプロっぽくて、カッコイイと思いませんか?

 赤ワインが白ワインより長期熟成するということは、逆に、長い間寝かせないと、飲み頃にならないということです。若い高級ワインは(特にボルドーは)、リリース後、2、3年でコルクを抜いて飲むと、タンニン爆弾にやられます。口の中に紙ヤスリを敷いたみたいにギシギシし、口がひん曲がるほど渋いので、20年、30年寝かせるのが普通です。自分が飲むのではなく、孫や子供に残すワインですね。なお、長期熟成させるのは、5,000円以上の高級ワインで、それより安価なワインは渋みも少なく、1年以内に飲み切りますので、「長期熟成」とは無縁です。彼が日常で飲んでいるワインは、多分、熟成の必要はないと思いますよ。

 で、解決策ですが、まず、上記の2点を把握しておきます。「把握する」とは、「頭の中に置くだけで、彼には直接言わない」ということです。プライドが高い彼に直接これを言うと、タンニン爆弾ではなく、本物の爆弾が爆発して、二人の仲は一瞬で終わります。注意しましょう。で、デートでタイ料理店へ行き、空芯菜炒めをオーダーし、ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンみたいなタンニン爆弾の高価な赤ワインを注文します。この2つの相性は、「猫にエスプレッソのダブル」を与えるようなもの。食べて飲んだ彼は、「うげげっ」と、赤ワイン以上に渋い表情をするはずです。そこで、シュナン・ブランや、ゲヴルツトラミネールみたいな香り高い白ワインをオーダーしましょう。この白とタイ料理の相性は、「猫にマグロの大トロ」状態で、彼も、「うわぁ、美味しいね!」と笑顔がこぼれ、背景には星が輝き、バラが咲くはずです。このように、「本当のワイン通は、食事に合わせて赤白ワインを選ぶ」「プロは、白ワインも大好き」であることをそれとなく伝え、洗脳するといいでしょう。

 ダメ押しが、シャンパーニュを悪用することです。銀河系で圧倒的にスタイリッシュでエレガントなワインがシャンパーニュ。もちろん、白ワインの一種ですね。シャンパーニュが嫌いな男性は、全世界で10ダースしかいません(120人は全員、イタリアで高級スパークリング・ワインを作り、シャンパーニュに強烈なライバル心を持つフランチャコルタ在住の生産者)。どんな食事とも相性がよくて、カッコいいシャンパーニュを半年ほど二人で飲むと、白ワインの圧倒的な人気品種、シャルドネの美味さが分かり、白ワインが大好きになるはずです。

 「食卓で仲良くワインを飲むと、ベッドでも仲良くなる」ので、上手くいくことを祈っています。

 

illustration:Tetsuro Sakaki

葉山考太郎

ワイン・ライター

シャンパーニュとブルゴーニュとタダ酒を愛するワイン・ライター。ワインの年間純飲酒量は400リットルを超える。これにより、2005年、シャンパーニュ騎士団のシュヴァリエを授章。「30分で一生使えるワイン術」(ポプラ新書)など著書多数。

好きなワイン

1番はタダ酒、2番目はブルゴーニュとシャンパーニュ。3番目は千円未満のワイン

好きなワインつまみ
たこ焼き、明石焼き、お好み焼き、蕎麦汁、ハムかつ、牡蠣フライ、海老フライ

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