森一起の今夜もコップワイン#008 有楽町「鮨大前」 | Wine365

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5. August 2017

森一起の今夜もコップワイン#008 有楽町「鮨大前」

 

新橋や日比谷、有楽町や銀座、近隣のサラリーマンたちから外国人観光客までが押し寄せる焼鳥タウン。有楽町のガード下は陽が落ちる頃から、焼鳥屋の煙が立ちこめる五里霧中な一角となる。

そんな中、ストリートまで客が溢れ出す焼鳥屋の端の方に、ひっそりと「鮨大前」という藍色の暖簾がかかっている。

そこは、知る人ぞ知る鯖の殿堂、背の青い魚のフルコースが味わえる青もの好きのパラダイスだ。

 

 

 

「お客さんが喜ぶ顔をいつも身近に感じていたい。それを真っ先に考えたら、1人で目が届く小さなカウンターが一番なんです」、長めの銀髪を後ろで束ねた大将(大前守さん)が、色っぽい笑顔で微笑む。

かつては30人の弟子を束ねて、青山で大きな店を開いていた。しかし、バブル期の混乱の中、相続トラブルで閉店。

心機一転して、有楽町のガード下で、鯖の美味しさを伝える店をオープン。大学卒業後カメラマンになっていた、息子の欽尉さん、姉の京子さんも加わった。大前一家の新しい伝説の始まりである。

 

 

 

 

焼鳥屋ばかりでなく、周りにはトロ箱を積み上げたチェーン店や、鮪を売り物にする大手の鮨屋も数多い。そんな中、鯖をフューチャーしたのには理由がある。鯖はほぼ全国で獲れる魚なので、1年を通じて常にベストな状態のものを仕入れることができる。

この日は、伊勢志摩のごま鯖と、宮崎のブランドま鯖「ひぬか鯖」。共にほとんど刺し身に近い軽い〆だが、1つは塩と昆布のみで〆、酢を使わないことで鯖本来の重厚な脂を活かす。ガリと合わせたり、山葵と柚胡椒のダブル使いなど、大将からの食べ方の提案も楽しい。

 

 

飛び切りの泡で始めた鯖のフルコースは、ここらでカンティーナ・ジャルディーノのヴィーノ・ビアンコ、とっておきのマグナムに代えよう。なんと、ここはすべてのドリングが持込フリー、もちろん抜栓料もない。

しかも、小鉢と刺し身に始まり、焼物などを挟んで鮨に終わる全コースの料金が7000円。途中、生牡蠣を足したり、最後に穴子をリクエストしても、8500円程度と思い切りリーズナブルだ。鯵に鰯、小肌、その季節最上の数種の鯖。背の青い魚のフルコースに酔い、大前親子の粋に酔う。忘れ得ぬ、有楽町の夜が更けて行く。

 

 

 

さぁ、海老の旨味が染み渡る〆の味噌汁の前に、マグナムをしっかり飲み干そう!やっぱり、舌にとろける穴子もリクエストしようか。でも、長居は無用。そろそろ、店の外には今宵2順目のお客たちが、幸せな時を心待ちにしているはずだ。

1杯のワインと旨いアテ、お気に入りの酒場があれば、まだまだ、この街は捨てたもんじゃない。

乾杯、鮨大前。乾杯、大将、欽ちゃん、お姉さん。かけがえのない今夜に乾杯しよう!

1杯のワインの向うには、少しだけ眩しい明日が見える。

 

 

鮨大前 (すしだいぜん)

〒100-0006東京都千代田区有楽町2-1

電話 03-3581-6641

営業時間 17:30~24:00

定休日 土日祝・市場休市日

森一起

街と泡好きなライター

下町ハイボールからシャンパーニュまで街と泡好きなライター、作詞家、ミュージシャン。9年続く、雑誌『料理通信』の人気連載「安くて旨くて何が悪い!」では、東京の目利き。食のキュレートサイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。
好きなワイン ジャン・イヴ・ペロンのヴァン・ド・フランス・ブラン・コティヨン・デ・ダム2013サン・スーフル
好きなつまみ タマリンドソースでグリルした鶏胸肉と青パパイヤをたっぷり挟んだ仏印風バインミーサンド

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