森一起の今夜もコップワイン#009 渋谷「ドレスのテイクアウト店」 | Wine365

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13. September 2017

森一起の今夜もコップワイン#009 渋谷「ドレスのテイクアウト店」

 

松田優作が通い詰めた下北沢の「レディ・ジェーン」、歌舞伎町ゴールデン街の雇われマスター、政治家御用達の赤坂のクラブ、いつのまにか包丁を握らされていた麻布の割烹、中国初だった大連のイタリアンレストラン、渋谷のんべい横丁…。

一見、何の脈略もない飲食のジグソーパズルの真ん中にいるのは、「ドレス」の森谷義則さんだ。

横丁から飛び出し、ライブもできる大型店を出したが、駅前の再開発で立退きへ。アメリカンクラブの厨房で、膨大な料理の仕込みをしている中、2坪に満たない極小物件に遭遇。テイクアウトのサンドイッチ屋を開店する。

 

 

本店はないのに、「テイクアウト店」、まずは支店から始めた。でも、ただのサンドイッチ屋じゃない、東京一のコールドサンドイッチだ。

レタスに潜む花椒マヨネーズにはフランス租界だった大連の記憶が、海老ケイジャンのニューオリンズ風味にはアメリカンクラブの思い出が、メンチカツには大陸からの洋食への憧憬が見え隠れする。

それは、旅の途中でみんな森谷さんが出会ってきた宝物だ。だから、店の前面を占領するショーケースを覗く度に胸の動悸が治まらない。

 

 

ドレスのサンドイッチの美味しさは、テイクアウトの食事でも楽しいが、そのまま店内で食べると極上のワインのアテになる。

赤白共に1杯500円のグラスワインは、フランス産のぐいぐいイケるタイプ。メンチカツサンド(220円)やパクチー入りのキーマカレーサンド(200円)に合わせると、瞬く間にコップが空になっていく。

それだけじゃない、店奥の黒板には、魅惑のメニューがずらりと並んでいて、その場で森谷さんが手早く調理してくれる。

人気のミラノ風カツレツ(1000円)のバター風味が店を包むと、その空気だけでももう1杯呑めそうだ。マッシュポテトが添えられたビーフストロガノフ(1000円)もリピーターが多い。まるで森谷さんの厨房で呑んでいるような小さな異郷は、今日もぎゅうぎゅう詰めの笑顔で満員電車状態だ。

 

 

 

この秋、ドレスのテイクアウト店には朗報がある。どうやら、ドレスの本店がオープンするらしいのだ。

場所は四ッ谷三丁目、開店はたぶん11月。今度は交差点に面したビルの4階。今から森谷さんの新しいチャレンジが楽しみだ。この場所で楽しめる時間はもう今月と来月だけ。さぁ、もう1杯、白か赤のグラスを貰おう!

今宵ここで出会う時間こそが、人生の最良の時だ。1杯のワインと旨いアテ、お気に入りの酒場があれば、まだまだ、この街も捨てたもんじゃない。

乾杯、ドレスのテイクアウト店、乾杯、森谷さん、乾杯、仕込で大活躍の奥さん、そして子どもたち。

かけがえのない今夜に乾杯しよう!

1杯のワインの向うには、少しだけ眩しい明日が見える。

 

 

ドレスのテイクアウト店

〒150-0031東京都渋谷区桜丘町15-19牛丼屋隣

電話 090-4418-4745

営業時間 18:00~26:00

定休日 日曜

 

 

森一起

街と泡好きなライター

下町ハイボールからシャンパーニュまで街と泡好きなライター、作詞家、ミュージシャン。9年続く、雑誌『料理通信』の人気連載「安くて旨くて何が悪い!」では、東京の目利き。食のキュレートサイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。
好きなワイン ジャン・イヴ・ペロンのヴァン・ド・フランス・ブラン・コティヨン・デ・ダム2013サン・スーフル
好きなつまみ タマリンドソースでグリルした鶏胸肉と青パパイヤをたっぷり挟んだ仏印風バインミーサンド

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